保健師と看護師は共に「保健師助産師看護師法」に定められた国家資格です。どちらも人の健康のために働く職ではありますが、職務内容やその活動範囲には違いがあります。
ここでは保健師と看護師の違いについて説明いたします。
看護師は、専門学校や短期大学で3年間、看護大学では4年間、高校の場合は、看護科と専攻科合わせて5年間学び卒業した後、看護師国家試験に合格することで資格を取得することができます。
一方、保健師の資格を得るには、保健師国家試験に合格する必要があります。また、この試験の受験資格を得るには、看護師の資格を取得していることと、文部科学大臣の指定した学校において保健師としての必要な学科を1年以上修めるか、厚生労働大臣の指定した保健師養成所を卒業することが条件になります。
このことから、保健師は看護師としての知識や技術を習得し、さらに保健師としての専門知識を習得していることになります。
保健師と看護師の大きな違いは、看護師の仕事が「病気や怪我を負った患者の治療を助けること」であるのに対し、保健師の仕事は「病気やケガの予防を目的とした活動」を行うという点にあります。
保健師は、病気や怪我を負った人だけではなく、健康な人も含め全ての人が、長く健康で暮らしていけるようにサポートしていく仕事です。
看護師と同様、解剖学や生理学、一般臨床医学などの専門科目、各種疾患の知識をベースとし、生活環境や社会保障制度、感染症や生活習慣病の予防など、より幅広い範囲で人々の健康を維持していくための知識を身に付ける必要があります。
勤務体制にも違いがあります。看護師が多く働いている病院では、入院中の患者を24時間体制で見守る必要があるため、夜勤や休日出勤の頻度が多くなります。一方、保健師の場合、一部の職場を除き夜勤を必要としません。
また、看護師は立ち仕事が中心になりますが、保健師は看護師に比べデスクワークの時間が多いのも特徴のひとつです。保健師は検診データの入力や分析、報告書作成、健康教室の企画、運営業務もまた重要な役割となります。
看護師の勤務地は、病院やクリニックなど医療機関がほとんどでしたが、2000年以降は、介護保険施行もあり、介護分野での活躍が年々拡大しています。そのほか、保育園や企業などで勤務もありますが、医療、介護分野での勤務が大半です。
保健師は、保健所、市区町村の役所、国民健康保険組合、看護支援センター、企業や学校の保健室等、勤務地は多岐に渡ります。これらの勤務地で地域住民や、企業の従業員や、学校の生徒等、対象となる人の健康管理や保険指導を行ないます。
また病院内での勤務もあります。病院では看護師と同じ業務を行なうことも多くなりますが、特に検診センターのある病院では健康管理を行なう保健師の資格を活かした業務を行なうことができるでしょう。
保健師の仕事は、自治体の保健センターや役所に配属される行政保健師、企業の産業保健スタッフとして勤務する産業保健師、学校で学生と教職員のケアを行う学校保健師の3つに大別されています。
その他にも、JICAやNGOのスタッフとして、発展途上国の保健活動や教育活動を行った足り、高齢者の健康管理や介護予防を中心に活動をする保健師も増加しており、求人数は右肩上がりとなっています。
女性中心の職場が多く、結婚や出産をしても働きやすく離職率の低いことも特徴の一つです。
また、施設や企業などの組織に属すことなく、知識と経験を活かして独立開業をする保健師も少なくありません。独居高齢者などの社会的問題、介護や福祉に関わる地域密着型サービスなど、保健師が活躍する場はますます広がっています。