精神科病棟は、日中は施錠をはずし病状に応じて患者さんが自由に病棟の外に出ることができる「開放病棟」と、出入り口を常時施錠して患者さんや面会者の出入りを制限する「閉鎖病棟」に大別されます。
一般的に、開放病棟では、症状が改善し始めた患者さんが社会復帰に向けて様々な生活スキルを身につけていくためのリハビリテーションを行っていくことが看護目標になります。一方、閉鎖病棟には比較的症状の重い患者さんが入院しており、服薬コントロールを中心とした症状の安定化や基本的な生活リズムの再獲得が主になります。
このように看護師は、精神科医やソーシャルワーカー、薬剤師、心理士、作業療法士などの多職種で構成される医療チームの一員として患者さんの治療やケアを行っていきます。
精神科治療において、病棟の環境は治療の経過を左右する最も重要な要素です。そのため、精神科の病棟は疾患別または治療目的別に分けられ、患者さんの状態に適した環境で治療が行われるようになっています。
例えば、男女混合病棟の他に男子病棟、女子病棟を設けている医療機関もあり、異性との関わりが回復に悪影響を与える場合に必要となります。思春期専門病棟やストレスケア専門病棟など、年齢層や治療目的に沿った病棟があるのも精神科ならではのものです。
認知症専門病棟やアルコール依存症専門病棟のように、疾患別に病棟を設ける医療機関も多くみられます。また、入院病棟以外にも、退院後の生活をフォローする精神科訪問看護部門、外来部門を併設している医療機関もありますので、精神科看護師に就職を希望する際は、あらかじめ関心のある疾患や経験を積みたい領域を絞っておくことが大切です。
看護師として精神科で勤務していくためには、心病む人の生きづらさや苦痛を受け止め、よりよい関係性を構築しつつ、患者さんをとりまく人間関係を客観的に把握することが何よりも重要となります。
看護をする自分自身が精神的に不安定な状態では、患者さんの訴えに耳を傾けること余裕がなくなってしまいますので、職場やプライベートでのストレスを上手に処理し、常に笑顔で患者さんの前に立てるよう自己管理する能力も求められるのです。
患者さんの症状や心の状態を的確に捉え、些細な変化も逃さず記録していくことも、看護師にとって欠かせない役割となります。普段の何気ない会話から状態悪化のサインを読み取ったり、ちょっとした行動から患者さんの不安に気付けることにより回復を助けるだけではなく、患者さんに対し大きな安心感を与えることができます。
精神科看護の魅力は、このような目には見えないやりとりを通して、患者さんと心を通わせていくことなのかもしれません。
精神科看護師として、他科にはない技能を高めていくことができる一方、注射や点滴などの医療処置の機会が減少する傾向にあることがデメリットとして挙げられます。そのため、新卒で精神科に就職した看護師が他科に転職する場合は、医療処置に対する不安が大きくなることが考えられます。