一般企業の従業員に対する健康管理者としての役割を担う産業保健師。最近では、職場内の人間関係悪化によるストレスや、多重労務を原因とした精神障害などによる離職率、休職率の増加が社会的問題になっており、産業保健師の活躍がますます期待されています。
ところが、これらの問題には、単に心理的な問題だけではなく、身体的問題、社会的環境が複雑に絡んでいることが多く、高度なカウンセリング技術や労務に関する知識が求められます。
そこで、産業保健師のキャリアアップとして注目されている資格が「産業カウンセラー」です。産業カウンセラーは、従業員が抱える問題を自らの力で解決できるように援助することを強みとした職種で、各種心理療法の原理、技法をはじめ、職場における労務管理、関係法規などを幅広く習得したものに与えられる資格です。保健師の資格と合わせれば、より多角的な観点から、従業員が抱える問題を解決に導くことができるでしょう。
産業カウンセラーは企業に務める人の問題解決に、心理学的手法を用いて支援する業務を行っています。カウンセリング技法だけではなく、労働基準法をはじめとした労務に関する深い知識を有しており、企業に対しては休職率や離職率低下を目的とした提案を行う立場にもあります。
多くの産業カウンセラーが企業内の人事部や労務部に配属し、一般業務と相談やカウンセリングを兼務していますが、大企業では従業員に対するメンタルケア専門の部署に所属し、組織全体の健康管理者として業務に当たることも少なくありません。
企業における産業カウンセラーの業務は、以下の3つの領域に大別することができます。
その他、休職者に対する復職支援、鬱病や神経症などの再発防止等について適切な対策を講じることが求められます。
産業カウンセラーの資格試験は、筆記試験、実技試験により行われます。受験資格は、「日本産業カウンセラー協会」が指定する養成講座を受講しなければ得ることはできません。
ただし、「4年制大学において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する学部の卒業者」であれば、面接実習のみ受講し受験資格を取得できる場合があります。
産業カウンセラー養成講座は、通学生と通信制のいずれかの受講方法を選択できます。どちらでも履修内容と面接実習(カウンセリング実習)時間に違いはありません。ただし、受講期間と料金が若干異なっています。受講期間は、通信制で1年間、通学制では約7カ月と定められており、受講料も通信制の方が若干割高です。
保健師として働きながら受講する人の多くが通信制の講座を受講していますが、できるだけ短期間で受験資格を得たい場合は、通学制で土日や平日の夜間を中心としたコースを選択する方法が良いでしょう。