健康な身体を維持し疾病を予防していくためには、本人の自己管理だけではなく、周りをとりまく家族の理解や協力が不可欠となります。例えば、糖尿病や高血圧症、肥満などの生活習慣病は、家族一丸となった取り組みが最も効果的と言われており、本人のモチベーションを維持する上でも重要です。
実際に本人への指導以上に、家族へのアドバイスや指導に時間を割く保健師も多数います。
また、少子化、核家族化が進む現代社会では、孤立する高齢者や幼児虐待、ドメスティックバイオレンスの問題も深刻化しています。
家庭内の問題は非常に複雑かつデリケートで、プライバシーに関わるため、介入には専門的な知識と家族カウンセリングの技術が必須です。
これらの家庭内の問題改善を専門的に行なう「家族相談士」という資格があります。
家族相談士は家族全員の健康管理や家族関係の改善に対する助言、指導、啓蒙活動が主な役割です。
家族関係の問題が頻繁に取り沙汰される現代社会において、家族相談士による支援活動は、大きな期待が持たれている分野です。
家族相談士は、「家族心理士・家族相談士資格認定機構」が実施する「家族相談士資格認定審査」に合格することで資格を得ることができます。
認定審査を受験するには、「NPO法人日本家族カウンセリング協会」が主催する家族相談士養成講座を修了することが必須です。
家族相談士養成講座は、誰もが自由に受講できるものではありません。大学または大学院で心理学領域の学部を卒業していることや、臨床心理士や産業カウンセラーの有資格者であるなどの条件が設定されています。
保健師の場合は、医師や看護師、社会福祉士などと共に受講資格者として認められています。
認定審査では、養成講座で学ぶ内容を中心に、書類審査および筆記試験、面接審査が行なわれます。筆記試験では、主に家族心理学、倫理、法律の分野から出題され、面接審査では実際のカウンセリング事例や調査研究内容から出題される傾向があります。
家族相談士は、病院や福祉施設をはじめ、幼稚園、小中学校、高校、大学、養護学校、塾などの教育機関の他、自治体が設置する相談窓口や電話相談など、様々な場面で活躍をしています。
さまざまな場所で必要とされる理由は、家族問題は家庭内のみならず、学校や職場での人間関係とも深く関わることも多く、それらを相互的に捉え援助していく必要があるためです。
家族相談士の活動の一つである家族カウンセリングは、家族をひとつのシステムと考えることにより、家族関係のバランスを調整していくことを目的としています。個人が抱える問題の根底に家庭内の問題が潜んでいることも多く、それらの問題を早期に発見し、家族全体で問題の解決に取り組むよう指導を行ないます。
知名度はまだまだ低い仕事ですが、今後さらなる活躍と啓蒙活動が期待されています。
保健師が行なう保健活動においても、支援の対象となる本人を支える家族に対し、家族カウンセリングの技術を多いに発揮することができます。家族との信頼関係構築にも繋がり、従来よりも一歩踏み込んだ支援が可能となるでしょう。